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反貧困ネットワーク事務局長の生の声 ~日常の崩壊と絶え間ないSOS~ 講演を開催しました

4月6日、オンラインにて反貧困ネットワークの事務局長の瀬戸大作氏を講師に迎え「日常の崩壊と絶え間ないSOS」講演会を開催、組合員と役職員約140名が参加しました。

反貧困ネットワークは、仕事や住宅を失い、ネットカフェ生活や路上生活を余儀なくされている方に街で声をかけ相談や支援を行っています。
同団体事務局長の瀬戸氏から、仕事を失い経済的困窮に陥る非正規雇用者の若者が急増していること、仕事を失うと同時に住まいも失う居住の貧困が深刻化していること、とくに在留外国人が苦境に追い込まれていることなどお話いただきました。
新型コロナウイルスの感染拡大により社会的に弱い立場の方を取り巻く危機的状況についての瀬戸氏の講演です。

メディア取材を受けることも多い反貧困ネットワーク事務局長 瀬戸大作氏

20代の若者に広がる困窮

2021年1月の一都三県への二度目の緊急事態宣言を機に、反貧困ネットワークには支援を求めるSOSが急増しています。2008年のリーマンショック後の「年越し派遣村」の時との違いについて、「対象者が中高年ではなく20代の若者がとても多い」と瀬戸氏。コロナ禍で仕事を失い、住まいも失い、ネットカフェ生活やホームレス生活となる若者が増えています。
その理由について瀬戸氏は「コロナ以前から若者に広がっていた非正規雇用という働き方が原因」と言います。不安定な雇用と低賃金で貯蓄をつくれなかった若者、親との関係から家を出たいとの理由で寮付きの仕事に就いた若者を、新型コロナウイルスによる社会と経済の混乱が直撃。仕事を失うと、すぐに住まいも失い、家がないことで新たな仕事にも就きにくく、そして困窮状態から抜け出せなくなる、と言います。

深刻な居住の貧困

反貧困ネットワークの支援活動は、ネットカフェ生活やホームレス生活をする方に街で声をかけ、相談を受け、「住宅喪失」した方に一時的な住まいを提供。本人の生活保護申請に同行支援するなど、アパート転宅に向けた居宅支援を行っています。

東京都の調査によると、住宅喪失に至る理由の多くは「仕事を辞めて家賃を払えなくなった」「仕事を辞めたので寮を出た」ためです。瀬戸氏は「新たにアパートに入居しようとしても非正規雇用の若者は、低賃金から敷金礼金などの初期費用を貯められない」と説明します。さらに「生活保護者を対象に、支援団体を名乗って自ら運営する施設に入居させ、マンションやオフィスビルの一室を2畳ほどの個室に区切っただけの劣悪な環境にもかかわらず、住宅費として生活保護の大部分を吸い上げる悪質な貧困ビジネスが横行している」と瀬戸氏は憤ります。

反貧困ネットワークが中心になって居住の貧困を解決するため、空き家活用、公営住宅の入居要件の緩和、緊急シェルターの整備など新たな社会の支援について提言を行っています。

新横浜本部からオンラインで配信しました

「反貧困ネットワークが中心となってすすめているハウジングファーストの考え方『住まいは人権』」

追い込まれる就労資格のない外国人

新型コロナウイルスの影響は在留外国人も窮地に追い込んでおり、反貧困ネットワークが支援する外国人も急増しています。就労資格のある技能実習生でも、実態は低賃金と過酷な労働条件で、貯蓄もなくやめることもできず、追い詰められていると言います。
また、新型コロナウイルスによる経済的影響を受けて最初に解雇されるのは外国人労働者です。さらに難民申請中で就労資格のないクルド人やミャンマー人は公的支援もないなか、「出入国管理及び難民認定法」の改正で退去強制や、帰国すれば迫害を受ける恐れのある本国への送還が現実味を帯びています。就労資格や在留資格のない外国人には定額給付金もなく、医療を受けることもできません。
「コロナ禍は平等にあるのに医療を受けられないなど外国人には支援がない。外国人を取り巻く環境は深刻度を増している」と瀬戸氏は危機感あらわにします。

講演に続く質疑応答で「組合員にしてほしいことは」と、問われた瀬戸氏。「やってほしい、してほしい、とは言いたくない。ただ同世代でも苦しんでいる人がいること、困っている若者や外国人のことを知ってほしい」そう語りました。

新型コロナウイルスの感染拡大とその影響により貧困の問題は急速に広がっています。引き続き当組合は貧困への対応と、私たち生協や組合員ができることは何か考え行動していきます。