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鎌倉市民によるフラットな食堂~ふらっとカフェ鎌倉~

当組合は、元気な地域づくりを目的とした地域社会の場や居場所づくりを応援しています。今回は、人と人とがフラットな関係でいられる居場所「ふらっとカフェ鎌倉」を紹介します。

ふらっとカフェ鎌倉は、0歳から80代まで老若男女が集い、みんなで配膳から片付けまで行う食堂です。「ふらふらっと気軽に立ち寄れる」「人と人がフラットな関係でいられる居場所」をコンセプトに、2017年3月に設立されました。

3年目の現在は、鎌倉の8店舗のレストランの定休日と特別養護老人ホームで、週1回開催しています。食材は鎌倉市のフードドライブ事業の提供や、個人や企業からの寄付で賄っています。使いきれない食材は、ふらっとカフェ鎌倉と主旨を同じくする「みんたべ連絡協議会」で繋がった10件の食堂へ分配したり、行政から必要な人へ渡してもらいます。寄付と協力金のみ、スタッフは全員ボランティアで運営されている食堂です。

子どもの食の貧困を感じ、食をとおした居場所づくりを

食材を保管している倉庫には、食材のほか、貸し出し用の鍋や包丁などの調理器具もある

代表の渡邉公子さんは2年前まで高校の家庭科の教員をしていました。「鎌倉は経済的な貧困はないですが、孤食や栄養の偏りなど、子どもの食の貧困を感じ、食をとおした居場所づくりを思いつきました」。

渡邉さんの声かけでレストランを貸してくれた方、ピアノの演奏会の収益を全額寄付してくださった方、また、鎌倉の地域活動を支援している面白法人カヤックでプレゼンをして、社員食堂を借りられることになりました。

※「まちの社員食堂」 鎌倉に拠点を持つ企業・団体31社がつくった、鎌倉在勤者限定の社員食堂。日曜日に借りられることになった

3カ月に1回、鎌倉女子大学管理栄養学科と児童学科とコラボレーションして、ふらっとカフェ鎌倉が開催されている

小学生が歩いて行ける場所にこだわり、小学校区にひとつの食堂開設をめざした渡邉さんは、「ここで、みんなでごはんが食べられたら素敵だな」と感じた店を1軒ずつ訪ね、多くの協力をとりつけました。「どの店でも、ある食材を利用して栄養のバランスがとれた料理を7品目くらい作ります。居場所づくりの場であり、食育や教育の場であり、多世代交流の場でもある。だから、みなさん来てくれるんじゃないかしら」(渡邉さん)

スタッフへの感謝の気持ちをかたちに

「みんたべ通貨」、年に1回12枚配布をしている

調理ボランティアスタッフは、現在約20名。「現役シェフと料理教室の感覚でいっしょに調理ができて、社会貢献もできるところはほかにない」「みんなに会えるのが楽しい」と毎回多くの人が来てくれるそうです。

継続してボランティアに来てくれるみなさんに、感謝の気持ちを表したいと常々考えていた渡邉さん。昨年7月にふらっとカフェ鎌倉で使える「みんたべ通貨」を作り配布したところ、大変喜んでもらえたそうです。

人と人とがフラットな関係であること

約30年間市民活動をしている渡邉さんが常に心に留めていることは、人とフラットな関係であることです。
「ふらっとカフェ鎌倉は私がきっかけで始めましたが、いっさい指示はしません。かかわるスタッフたちは、自分で考え、特技や好きなことを活かして積極的に協力してくれます。包丁が得意な人、子どもと遊ぶのが好きな人、自然に役割分担をします。ここには上下関係も、強制もありません。食堂なので、食べに来てくれるだけでありがとう、なんです」(渡邉さん) ある日「いつもごちそうになってばかりなので、ボランティアのみなさんでどうぞ」と、赤ちゃん連れのお母さんたちが、おまんじゅうを持ってきてくれました。若いお母さんたちの心遣いを嬉しく思うと同時に、フラットな関係の環境で、お互いさまの精神が自然に芽生え、自分にできることでお返しをしよう、という精神が育っていることが、渡邉さんは本当に嬉しかったそうです。

3年目のふらっとカフェ鎌倉は、初めて来た人も、自然と店の雰囲気に馴染んでいるそうです。フラットな関係づくりを大事にしてきた渡邉さんの信念が、その言葉や振る舞いで、集まる人たちの意識に自然と定着してきたようです。「善意の人が周りに沢山いて、みんなが助けてくれます。私ひとりではできないことだし、ひとりでがんばっている意識はまったくありません。本当にみんなのおかげです」(渡邉さん)

「日常の食事の場ですから、泣いたっていい。ぼやーんとしてもいい。 自然体のまま、みんなで過ごす場所が必要だと思いました」 と語る一般社団法人ふらっとカフェ鎌倉代表の渡邉公子さん