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「中筋純写真展&ギャラリートーク」を開催しました

2月13日~15日の間、ふらっとパル茅ヶ崎にて「中筋純『流転・福島&チェルノブイリ』写真展&ギャラリートーク」を開催し、組合員や一般の方など、3日間で92名が来場しました。

東日本大震災の被災地についての情報が減ってきており、今もまださまざまな場所にて、目には見えない大変な思いをされている方々のくらしを想像することが難しくなっています。今回の写真展の最終日には、チェルノブイリと福島を撮り続けてきた写真家・中筋純氏に写真が撮られた背景やエピソードなどをうかがいながら被災地の今に思いを寄せました。また、陸前高田市出身の下地亜矢香氏にご親族の東日本大震災被災体験をとおして、防災についてお話しいただきました。

福島とチェルノブイリから考える「コンセントの向こう側」

会場の様子

チェルノブイリの写真を映し出しながら、「高いところに上って俯瞰すると向こう側に見える電線など、その地域の全容が見えます。それを見ると、自分の家のコンセントはその遠い電線にもつながっており、遠い場所での不幸せがこちらの幸せになっていることもある。そのコンセントの先をちゃんと見る作業をやっていきたいと思いながら活動しています」と、チェルノブイリや福島についてどのように表現することを意識しているかを話される中筋氏。

放射能は写真に写るものではないため、写らないものをどう写すかという写真家にとってのチャレンジでもあるとのこと。そこで、時の流れをどうあぶりだすかを考え、定点で追いかけて写真を撮るようになったとのことです。

写真家の中筋純氏

定点で追いかけた写真の映像は、まさに被災地の時の流れを感じることができ、思わず会場中が息を凝らして見つめる写真でした。

さらに、被災地および被災者の取材について話される中筋氏。写真とともに、被災地で農業に携わっていた方の「故郷が恋しくなるから土を触るのをやめた」という話や、戻ることができずに自宅を解体される方の思いなど、なかなか知ることができない被災地の今について知ることができました。

震災・その時・これから

「パニックとかそのような言葉では表現できない…そんな気持ちでいっぱいでした」と震災当時の様子を話し始められた下地氏。震災当時のご親族の様子やメディアでは報道されない被災地の様子など、時に涙を浮かべながら話される内容に、参加者のみなさんも静かにかつ熱心に耳を傾けていました。

下地氏は、この体験をもとに、現在は地域を中心に防災について語る活動や、茅ケ崎市内の小学校へ震災の絵本などを寄贈する活動をされています。「震災を忘れず、いざ何かあった場合に自分や家族の命を守ってほしい。自然の力は大きいけれど、備えることで少しでも被害が減らせる可能性があります。ぜひ家族で話し合ってください」との話に会場中が防災への気持ちを新たにした様子でした。

多くの方にご参加いただきました

防災について語る下地亜矢香氏

最後に参加者より「ご親族の被災で大変な思いをなさってきて、それをお話しされるつらさもあるだろうと思われるなか、このような活動をなさっている姿に感動しました」という感想がありました。その言葉に参加者のみなさんも深くうなずき、中筋氏のギャラリートークおよび下地氏の講演をとおして、東日本大震災の記憶を風化させず、私たちに何ができるのかを考える機会になった一日となりました。

写真展来場者およびギャラリートーク参加者の感想より

  • 原発事故によって日常が失われ、フレコンバッグの中には汚染土や汚染物質だけでなく、そこにくらしていた人の歴史や思い出がつまっていて、そのことに思いをはせることで、当事者意識をもつことの大切さを痛感した。そのことを知り、伝えることの教育が重要。
  • その場にいないとわからないこと、繰り返し訪ねることで意味をもつこと、それを実践している中筋氏はすばらしい。
  • 枯れた大根の写真を見たときに、となりにある瞳のポスターと合わせて、原子力への純なアンチテーゼの作品だと思っていました。しかし、写真に書かれた言葉には、そこでくらしていた人の背景があり、感銘を受けました。科学が悪なのか、豊かさが悪なのか、何かを犯人にして、責任を負わすことよりも、被害を受けた土地、人、物へ、たまたまデメリットを受けざるを得なかった人へ、その悲しみに、たまたまメリットを受けていた私が、その苦しみに寄り添えることができる写真や声を、もっと見て聞いていたい。
  • 写真を見ただけではわからないことをギャラリートークでより深く理解することができた。チェルノブイリの話や哲学的な話もあり、たくさん考えさせられた。フレコンバッグの中は土や草だけだと思っていたが、個々人の宝物や想い出がたくさんつまっていることをしり、とてもショックだった。今日の話を私なりに発信していきたい。
  • つらい経験をされたことから、ご自身で防災教育をされていること、茅ヶ崎の地元の方が本当に願う復興とは・・・。ここでも当事者意識が問われていると思った。「自分の命は自分で守る」心に刻みたいです。
  • 震災にあわれた方の体験談は、何度聞いても身につまされるものがある。マスコミではひと括りで扱われて、一人ひとりが埋もれてしまうが、震災当時の様子を聞き、一人ひとりのドラマがあるのだと思った。つらい体験があるのに、私費で絵本を贈る活動をしていて凄い。