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「パルゆめシアター『ふたつの故郷を生きる』上映&トーク」を開催しました

9月29日、崎陽軒横浜本店(横浜市西区)にて甲状腺検診キックオフ企画「パルゆめシアター『ふたつの故郷を生きる』上映&トーク」を開催し、組合員・役職員63名が参加しました。

映画『ふたつの故郷を生きる』は、福島の原発事故後、都内で避難生活を続ける母子と、避難者一人ひとりに親身に向き合う支援者たち、そして政府に政策改善を迫り、粘り強く行動する女性たちの姿を描くことで、復興のあるべき姿を問いかける作品です。まず、福島と神奈川で甲状腺検診を継続して実施いただいている内科医で「3.11 甲状腺がん子ども基金」顧問の牛山元美氏による「甲状腺検診からみえてきたこと」の講演から始まり、映画の上映となりました。

甲状腺検診から見えてきたこと、そして今できること

講師の牛山元美氏

福島県では、東京電力福島第一原発事故を踏まえ、子どもたちの健康を長期に見守ることを目的に、2011年3月11日時点で概ね18歳以下の福島県民を対象として甲状腺検査を実施しています。これは、チェルノブイリ原発事故後に明らかになった健康被害として、放射性ヨウ素の内部被ばくによる小児の甲状腺がんがあるからです。原発事故による放射線被ばくと甲状腺がんの関連性は、まだまだ今後の調査・精査・検討が必要と考えられていますが、「県民健康調査で把握していない福島の小児・若年者の甲状腺がん患者が多数存在しているうえ、把握しているデータに関しても部分的にしか公開されていないにもかかわらず、原発事故による放射線被ばくと甲状腺がんは関連がないと性急に断言してしまっている。国は事実を正確に把握しようとしていない」と話される牛山氏。

多くの組合員にご参加いただきました

このような現状で、私たちが今できることはどんなことでしょうか? 牛山氏は、「バランスの良い、適量の安全な食事として、測定された食品・測定している店を利用する。生協などでの購入をおすすめします。私もそうしています」と提案されました。さらに、「タバコ吸わず、アルコール適量」「疲れたら休む、ストレス発散、充分な睡眠」「安全な場所での適度な運動」とのことでした。そして、「私たち自身が安心して幸せに生きるため、未来を担う子どもたちの健康を守るため、過去から学び、今できることを、力を合わせてやり続けましょう!」という力強い言葉への大きな拍手とともに講演会は終了しました。

福島の現状と避難者が直面する実情とは?

映画が始まり、「普通の生活をしたくて福島から出てきた」と話すのは、ふたりの子どもを連れて都内に自主避難されている女性です。2017年3月、原発事故によって避難指示区域外から避難する自主避難者への事実上唯一の支援策であった住宅無償提供が打ち切られました。仕事などの事情により福島にとどまる夫との二重生活を成り立たせるために、土日も働いている状態とのこと。福島の自宅の庭で計測した放射線空間線量が、東京の約6倍の数値であることに疑問を呈している姿が印象的でした。また自らも自主避難者であり、かつ、支援者でもある女性へのインタビューでは、経済的・精神的に困窮し、自死を選んでしまう自主避難者がいることへの無念さをにじませている姿に、福島の現状や復興のあるべき姿を考えさせられる内容でした。

中川監督・牛山医師インタビューの様子

監督の中川あゆみ氏と牛山氏のインタビューの後、自らも福島の保養などの震災支援をしている参加者が感想を述べられました。「福島からの避難者を支援しているが、行政からお金が回ってこず、自分の生活とのジレンマを感じている」との話に、中川氏はテレビの企画が通らなかったエピソードとともに、「自己責任ではなく、社会の問題として捉えていかないと」と話され、牛山氏は「いろいろな立場の人がいて、できることできないことがある。できることを考えましょう」と話され、深くうなずく会場でした。

原発事故による被ばくの影響は数年たってから現れるケースもあります。不安に思う保護者の声にこたえ、当組合は今年度も医師や検査技師、そしてボランティアの組合員の協力のもと、子どもの甲状腺エコー検診を継続実施します。
検診について詳しくはこちら⇒子どもの甲状腺エコー検診2019