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「カンボジア指定募金」報告学習会を開催しました

2月29日、新横浜本部にて、神奈川県ユニセフ協会より講師を招き、「カンボジア指定募金」の報告学習会を開催しました。
2019年から5年間実施したカンボジア指定募金の意義や募金が現地でどのように活用され、成果に結びついたのかの内容報告と、次年度から開始予定の「ガーナ指定募金」の説明も行われました。

冒頭、神奈川県ユニセフ協会事務局長の関山万里子氏より、ユニセフの取り組み、カンボジアの「暴力と虐待からの子どもの保護」プログラムについてお話がありました。

関山氏は、「指定募金は国や地域・使途を限定した取り組みです、カンボジア指定募金では『子どもの権利条約』のひとつ<子どもの保護>に活用されました。パルシステム神奈川の組合員のみなさまは、この指定募金に5年間ご協力いただき、誠にありがとうございました。2013年のカンボジアで行った全国調査では子どものふたりにひとりは保護者や学校の先生といった身近なおとなからの暴力を受けていることがわかりました。これは貧困・格差・社会的不平等や過去の内戦が原因です。指定募金を活用し、暴力の世代間連鎖を断ち切るためのプロジェクトはふたつ。ひとつは保護者向けの子どもに暴力をふるわない子育て研修『ポジティブ子育て法』。もうひとつは先生向けのしつけに暴力を使わない学校づくりをめざす『ポジティブ生徒指導法』の実施です。コロナ禍で出稼ぎに行けなくなったカンボジアの親たちは、子どもと向き合う時間が多くなりましたが、『このプロジェクトを行うことで大きなリスク回避になった』とユニセフ現地事務所からの声がありました」と話しました。

神奈川県ユニセフ協会事務局長 関山万里子氏

次に、神奈川県ユニセフ協会職員の田村由美氏と当組合常任理事の楊直子から2023年11月に行った現地視察の報告が行われました。

まず田村氏より、カンボジアとはどのような国か紹介がされました。
田村氏は、「私が首に巻いているのは地元の小学校を訪問したときに歓迎でプレゼントされたクロマーというものです。カンボジアは敬虔な仏教徒が多いですが、少年法が充分に機能しておらず、麻薬犯罪や密輸で刑務所に送られた子どもたちが過酷な環境で服役しているなど、多くの問題が指摘されています。また、1970年代の戦争や内戦で当時の人口の1/3が命を落としています。このような背景のため、日常的に暴力があふれ、子どもたちを取り巻くカンボジア社会の大きな問題となっています。親世代は暴力によるしつけを受けているため、子どもに暴力をふるってしまいます。しかしプロジェクトの研修を受けることで、暴力の連鎖を止めることができたのです。この結果を子どもだけでなく、おとなもとても喜んでいます」と話しました。

常任理事の楊からは、現地視察と女性と子どもを取り巻く状況について報告がありました。
「『ポジティブ子育て法』の研修は、女性省がユニセフの資金援援助を受けて“レベル1 すべての保護者が対象”“レベル2 貧困、障がい者がいる、親が不在などの家庭が対象”“レベル3 実際に暴力を経験している子どもがいる家庭”のレベル別で行っています」と説明し、
「バッタンバン州コルクス村、シアムリアップ州タホック村で開催された研修を視察しました。“レベル2”では、団体や地方自治体と連携、必要に応じて社会福祉担当者が家庭を訪問してどのような行政サービスが必要か検討するそうです。ポジティブ子育て法を実施後は、暴力が減り、家族関係が良くなり、参加者自身が成果を実感し持続可能な取り組みになっているが、男性参加者が少なく、すべての地域に浸透しているわけではないといった課題が残っています。広げていくことが重要です」と語りました。

また、もうひとつのプロジェクトである「ポジティブ生徒指導法」について、
「視察したバッタンバン州のコン・クロン小学校は、2015年からユニセフの支援を受けていて、カンボジアで最初に『ポジティブ生徒指導法』を取り入れた学校です。校長先生からは『指導法を取り入れてから学校全体がいい雰囲気になった、退学する生徒が減った、ポジティブ指導法を広めて、カンボジア全体の教育の質を高めたい』との感想を聞くことができました。また、シアムリアップ州のプレイ・チュローク小学校で会った子どもたちからは、『先生がやさしくなって学校が楽しい』という声が聞かれました。どちらの学校も『ポジティブ生徒指導法』を実施後は、退学する子は減りましたが、この指導法に対して保護者の理解が追いついていない、またすべての地域に浸透していないという課題があります」と語りました。

また、田村氏からは、現地の声として謝辞動画が紹介され、
「村の委員、教師から『家庭だけでなく村中で暴力が減った』『指導法を実践してからは生徒が怖がらなくなり積極的に勉強し、意見を発言できるようになった』とのメッセージをいただきました。現地の方からは、このプロジェクトに対して沢山の感謝の声をいただきました。これからも支援を続けてほしいとの意見がありましたが、その国で予算を付けて自国で取り組みを広げるための助言をユニセフで行います。政府への提言、NPOと連携して持続可能な取り組みを続けます」と報告されました。

常任理事 楊直子(左)とユニセフ職員田村由美氏(右)

最後に、関山氏より、次年度より予定している第5次指定募金「ガーナの児童婚を終わらせる」の話がありました。

関山氏は、「ガーナ指定募金は2024年から2028年、5年間取り組みます。ユニセフでは<18歳未満の結婚>を児童婚の定義としています、18歳未満の結婚は子どもの権利の侵害です。児童婚は暴力・学校退学・妊産婦死亡のリスクを高めます。その原因の多くは、子ども自身に知識がない、地域のおとなの子どもの保護への意識が希薄なことです。現在、世界では19%の子どもたちが児童婚をさせられています。ガーナの児童婚の割合は2018年で19.3%とほぼ世界平均です。5人にひとりの女の子が児童婚で結婚するイメージですが、ガーナ国内でばらつきがあり北部28%、東部23%と高い比率です」と説明。
「神奈川県ユニセフ協会が支援するプロジェクトは、活動1<女の子のエンパワーメントできる安全な場所の提供>訓練を受けたファシリテーター(若い女性)がPASSプログラムを指導します。これは児童婚の危機にさらされている思春期の女の子を対象としています。PASSプログラムとは、性教育、女性が自立して生きていくことができるさまざまな知識を得る内容です。また、不安や心配を相談できる窓口でもあります。活動2<地域コミュニティが女の子を守る研修>子どもや青少年の保護に関するさまざまな問題についての啓発セミナーを開催します。親や保護者、伝統的な宗教指導者(キリスト教・イスラム教)、コミュニティ住民を対象として行い、児童婚や意図しない妊娠からの保護など、子どもの保護のための前向きな対策と実践を促進します。若い男性、男の子にも研修を受けてもらうよう呼びかけます。この2つの活動を推進していきます、ご支援をよろしくお願いいたします」と話されました。

これまで5年間カンボジア指定募金のご協力、誠にありがとうございました。
パルシステム神奈川は神奈川県ユニセフ協会と協力し、2024年度よりガーナ指定募金を開始する予定です。
ご支援・ご協力をよろしくお願い致します。

   

上記についてのお問い合わせは新横浜本部 組織政策課(TEL045-470-4172 月~金・10~17時)宛てにお願いいたします。