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「明治大学平和教育登戸研究所資料館 見学ツアー」を開催しました

12月9日、明治大学生田キャンパス(川崎市多摩区)内にある「明治大学平和教育登戸研究所資料館」(以下、登戸研究所資料館)の見学ツアーを開催し、組合員20名が参加しました。

秘密を抱えながらくらすってどういうこと?

まず始めに、DVDを鑑賞し、登戸研究所設立の経緯、そこで秘密を抱えながら働く人々のことなどについて学びました。登戸研究所は1937(昭和12)年に陸軍科学研究所登戸実験場として開設されました。当時は「秘密戦」(防諜・諜報・謀略・宣伝)のための兵器を研究していた特殊な技術研究施設として存在。風船爆弾、細菌兵器、暗殺用毒物、スパイ用品、中国の偽札などを開発・製造していました。

ここで行われていたことは決して外部に知られてはならなかったため、正式名称ではなく「登戸研究所」と呼ばれていました。そしてそこで働く人もまた研究・開発内容という秘密を抱えながらくらしていました。秘密を抱えるってどういうこと? 友人に「今日何してた?」と聞かれても答えられないってどんな気持ち? と参加者に考えてもらいながら資料館を見学しました。

典型的な陸軍の建物を保存・活用した「明治大学平和教育登戸研究所資料館」の外観

DVDで登戸研究所で働く人々のことなどを学びました

女学生(中学生)が動員され、作られた風船爆弾

学芸員の方の説明を受けながら、資料館全体を見学。風船爆弾(1/10サイズ模型)、細菌兵器や偽札の展示を見て、当時の過酷で緊迫した状況を知ることができました。

「風船爆弾」とは和紙をこんにゃく糊で貼り合わせた気球に水素ガスを注入したもので、太平洋を偏西風に乗せておよそ9000キロのも距離のアメリカ大陸まで飛行させ、爆発させる目的で製造されました。全国からさまざまな人びとが動員され、女学生たちが和紙の貼りあわせをを担当しました。指紋が消えるほどの数を製造し、実際には1万発を放球、1000発が着弾、うち1発が爆発したと言われています。参加者は実際の写真や模型を見て、その大きさや仕組みに驚いていました。

また生物兵器の開発では、敵国の食料である動植物に大打撃を与えることを目的とした研究が行われていました。毒物兵器の開発では捕虜を対象に人体実験が行われたと学芸員の方から説明がされ、参加者たちはその恐ろしさに驚くとともに後世に伝える大切さを実感したようです。

風船爆弾の構造の解説を聞き入る参加者たち

展示物を熱心に見る小学生参加者

偽札製造の様子や使われ方を学芸員の方から聞きました

学内史跡めぐり

資料館で見学の後、DVDを観ながら「秘密を抱えながらくらすってどういうこと?」の答え合わせとしてから、登戸研究所の面影を残す史跡めぐりをしました。ここでは明治大学生田キャンパス内に残る弾薬庫、陸軍のマークのついた消火栓、動物慰霊碑などの史跡が紹介され、現在のキャンパスから登戸研究所が存在していた過去を振り返りました。

通称「弾薬庫」

陸軍のマークである星形が記されている消火栓

東条英機から授与された金一封で建てられた「動物慰霊碑」

登戸研究所の研究内容やそこで開発された兵器・偽札などの資材は戦後すぐに証拠隠滅作業が行われ、長い間は語られることがありませんでした。しかし、自分たちの住んでいる地域の歴史をしらべようとした高校生などのひたむきな調査活動により、元所員などの関係者が少しずつ詳細を語るようになってきました。そのため、歴史にはほとんど記録されていない秘密戦に焦点をあてた、日本では唯一の資料館となりました。この見学ツアーでは学校では教わらない事実を知る、戦争が人間をどのように変えてしまうのか、そして場合によっては理性と人間性を喪失しかねない機能をもってしまう科学技術と戦争とのかかわり方を考える場となり、戦争のない平和な世界への願いを後世に語り・引き継ぐことの大切さを学ぶ機会となりました。

登戸研究所資料館は一般にも公開されています。戦争のために秘密裏に進められたこと、そこで働ていた方の思いなどを知るために、みなさんもぜひ訪れてみてください。

登戸研究所資料館については詳しくはこちらから⇒https://www.meiji.ac.jp/noborito/

 

また、パルシステム神奈川では、今後も身近な戦跡に関するイベントの開催を検討しています。訪れてみたい戦跡や身近な戦跡に関する情報ございましたら、ぜひ下記にお寄せください。

戦跡に関する情報はこちらから⇒https://web2.mm.pal-system.co.jp/form/pub/kanagawa/senseki

参加者アンケート

  • 今回、いっしょに行った小学4年生の子どもが感じることがあったらしく、いろいろと質問され親子で戦争について話す機会になりました。 
  • 戦争・平和にかかわらず地元の歴史への興味から参加しましたが、とても良かったです。また何度でも訪れたい場所になりました。
  • 最後に見た展示室で、よりいっそう戦争の恐ろしさに現実味がわきました。