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「有限会社大牧農場 公開確認会」を開催しました

7月13日~14日、北海道河東郡音更(おとふけ)町にある「有限会社大牧農場」にて公開確認会を開催しました。事前に行った公開確認会基礎学習会と事前学習会を修了した組合員・理事代表の監査人、役職員など17名が産地を訪問。『エコ・じゃがいも(男爵・北海こがね)』の栽培状況や帳票などを確認しました。

公開確認会は、1999年に始まった、生産者と消費者(組合員)の二者が産地で生産状況を確認するパルシステム独自の取り組みです。これまで農産、畜産、水産の産地を中心にグループ全体で累計152回の公開確認会を開催しています(2022年12月時点)。

今回、当組合が公開確認会を行った大牧農場がある音更町は北海道十勝平野のほぼ中央に位置し、小麦の生産量は日本一、馬鈴薯や大豆などの畑作が盛んな地域です。大牧農場は、(株)イソカワファーム、(株)カシノキ、(株)村橋農場の農家3戸と近隣協力農家4戸を合わせて耕作面積450haで、今回の公開確認会監査対象となったじゃがいものほかに、大豆や小豆なども栽培しています。

北海道音更町にある大牧農場の『エコ・じゃがいも』の畑

公開確認会 1日目

音更町文化センターにて、大牧農協関係者、監査人をはじめとしたパルシステムの組合員・役職員に加え、北海道内や神奈川県内の産直産地、音更町農協など総勢51名が参加し、公開確認会は開会しました。

当組合専務理事の網野拓男(あみのたくお)は、開会のあいさつのなかで「公開確認会は農薬削減の取り組みから始まり、組合員がその取り組みを理解し、実際に産地に行って確認することに意義がある。産地とパルシステム・生産者同士や、行政など地域一帯の取り組みとして発展している」と話し、公開確認会を通じ、産直の意義や地域のつながりにつなげていきたいとの思いを述べました。

続いて、大牧農場取締役の五十川賢治(いそかわけんじ)氏は、「日本の農業は課題が多いが、公開確認会を通じ、価値ある取り組みをみなさんに届けたいと思う。パルシステムの『もっといい明日へ 超えてく』は、産直産地の価値をもっと高めていこうという想いとして受け止めた。みなさんの知恵を結集して有意義な公開確認会を行っていただきたい」と述べました。

当日は、音更町農政課課長も開会式であいさつし、初日のプログラムにも同行していただき、町を挙げて産地を応援している様子がうかがえました。

大牧農場の関係者のみなさん

産地プレゼンテーションで理念や栽培方針を確認

産地からのプレゼンテーションでは、取締役の五十川氏より大牧農場の理念や概要、中音更地区の土壌特性とその対策、堆肥づくりから農薬削減の取り組みなどについて、また、同じく取締役の村橋美学(むらはしよしたか)氏より栽培から出荷までの流れとその際の苦労や工夫、交流事業など説明を受けました。その後、出席者より多様な質問が出され、理解を深めました。

帳票作成も大事な作業のひとつ

次に、会場に用意されたたくさんの帳票類の監査が行われました。栽培計画や栽培記録、出荷記録、残留農薬分析結果などの帳票をもとに、監査人のみなさんは真剣な表情で、“帳票を確認しては生産者に質問し、大事なことを書き留める”を繰り返していました。帳票の作成や管理は、よい生育につながった点も改善すべき点も含め、翌年以降の栽培計画に反映させるための大切な作業のひとつであり、それを実践されていることが確認できました。

産地の理念や概要などについての産地プレゼンテーション

監査人は帳票類を確認し、生産者に質問します

公開確認会 2日目

2日目は、ほ場・農薬保管庫・堆肥場・機材倉庫などの現場を視察しました。移動のバスの中では、五十川氏と村橋氏に音更町の歴史や環境、大牧農場の成り立ちなどをお話しいただきました。「何でも聞いてください」との言葉に、たくさんの準備をしてこの日を迎えられたことが伝わり、多くの情報から大牧農場の現状や取り組みを多角的にとらえることができました。

実際に見て、触って、感じることの大切さ

はじめに、取締役の村橋氏の案内で、農薬保管庫の見学を行いました。農薬保管庫に鍵が取り付けられていること、包材の回収方法、散布時の手順や区分けができているかなど、監査項目にそって聞き取りと目視で確認しました。

また、北海こがねと男爵のほ場見学を行い、一面に広がるじゃがいもの白い花の前で、村橋氏より土壌によってじゃがいもの皮の色や食味に差が出るとの話や栽培状況に関する説明を受けました。実際にじゃがいもを掘り出してもらい、約1カ月後に収穫できるじゃがいもの生育の様子を確認しました。

堆肥場では、五十川氏より、鶏糞と牛糞を混ぜ合わせて作る堆肥について、堆肥ができるまでの流れや工夫などの説明がされました。人の背の高さほどに積み上げられた堆肥や発酵設備、大型の運搬用機材を目の当たりにして、北海道の農業のスケールの大きさをあらためて感じました。

広大なじゃがいも畑にて『エコ・じゃがいも』について語る村橋氏

堆肥場の発酵設備を見学

機材倉庫見学では、北海道の広大な畑で使用する草刈り機や収穫機などの機材について説明を受けました。倉庫前選別機を導入したことで、選別にかかる負担を減らしたことなどを聞き、実際に使用している機材や貯蔵庫の確認を行いました。

監査人からは、その都度、たくさんの質問が出され、生産者がていねいに答えていました。実際に現地に行ったからこそわかる規模の大きさや、現場のにおい、畑の様子など、五感を活用して確認し、代表としてしっかりと監査し、伝えていきたいという姿勢があらわれていました。

機材庫には大型の機材が多数。手入れが行き届いた状態で保管されています

全長十数メートルある倉庫前選別機。導入により格段に効率が上がったとのこと

伝えたい3つの想い

公開確認会で各現場を見学していくなかで、五十川氏より大牧農場の取り組みのなかで「3つの伝えたいこと」について、お話しいただきました。

ひとつめは、「北海道の陸と海をつなげる『ガニアシ堆肥』をつくり、広げていく計画」について熱く語られました。「えりも漁協の昆布漁で発生する『ガニアシ』(昆布の岩に貼りついている部分)は通常は廃棄せざるを得ないが、堆肥に入れ込むことにより再利用できる。ミネラル分をたっぷり含み、よい堆肥になるし資源の有効活用にもつながる」とのことです。

ふたつめは、国産飼料自給率を上げていく取り組みとして、飼料用とうもろこし畑を前に話をうかがいました。輸入飼料の高騰や遺伝子組換え問題も視野に、畜産農家と連携して組合員に届けるといった計画です。組合員が飼料づくりから参画していくようなしくみをパルシステムとつくっていきたいと話され、日本の農業を自立した産業にしていくといった想いを実践していく姿を垣間見ました。

3つめには、地力維持に関する取り組みとして、雑草制御効果も期待できる緑肥「ヘアリーベッチ」(マメ科の植物)の活用です。植物の力により土壌改良・地力維持の取り組みを積極的に実施しているとのことです。

これらの取り組みは、大牧農場の理念「私たちは自然を受け入れ、環境保全型農業の確立に取り組み消費者の皆さんと一緒に夢と希望を持って、食味の良い、栄養価の高い、安心できる農作物を生産し、次世代に継続していける農業と生活の確立に取り組んでいく」という考えにもとづいたものであり、課題を夢や希望に変えていく姿に、参加者一同感銘を受け、それぞれの立場で何ができるかを考えるきっかけとなりました。

「ヘアリーベッチ」を手に緑肥による地力維持について説明する五十川氏

監査人からの報告

午後は中音更会館にて、監査所見報告を行いました。監査人から、監査に協力いただいたことのお礼と今回の所見が述べられました。
「農薬使用の記録や使用済資材の廃棄方法などを帳票及び現地で確認しました」「産地活性化の取り組みビジョンについて、3世代目・4世代目と続いている状況がうかがえました。音更町産100%の給食にしていきたいとの想いをうかがい、若い人が農業に夢をもっていることがわかりました」「エコ・チャレンジの基準に沿って栽培されていることを確認しました。環境保全に向けた取り組みや残留農薬検査などもクリアしています」などの監査報告や、「緑肥作物や国産飼料のことなど、3つの伝えたい取り組みを知り、大牧農場が大好きになりました」「トラクターを磨いて準備してくださっており、細かいところまでおもてなしいただいたことに感動しました。組合員にしっかりと伝えていきたいです」といった感想が寄せられました。

産地からは「公開確認会を通じて、みなさんにじゃがいもを試食していただいている姿を見て、あらためて産地としての責任と覚悟を感じました。みなさんとともに夢と希望をもって、ますます産直を推進していきたい」と受け止めの言葉があり、2日間にわたる公開確認会は無事終了しました。

大牧農場の広大な農地をバックに記念撮影