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「認知症とともに『笑顔で生きる』」講演会を開催しました

10月14日、新横浜ホールにて、若年性認知症当事者で、認知症への理解を広める活動に尽力されている丹野智文氏を講師に迎え、「認知症とともに『笑顔で生きる』」を開催し、会場とオンライン合わせて145名が参加しました。

認知症になっても人生は新しく変えられる

自動車販売会社のトップセールスマンとして活躍していた丹野氏は、39歳で若年性認知症と診断されました。診断数年前から記憶に違和感を覚え、同僚の顔がわからなくなるなど症状が深刻となり、病院を受診し、目につく悪い情報に「終わったと感じた」と語られました。
進行、家族、仕事、今後の不安に押しつぶされそうになるなか、当事者と家族の会で出会ったのが20才以上年上の「普通に笑顔で優しい認知症当事者」の方でした。〝この人のように生きたい″丹野氏のその後の人生はここから変わっていきました。

認知症に対する考え方、サポートのあり方

認知症というと、周囲はできない、守らなければならないと思い、優しさからすべてをやってしまうが、本当にそのような介護が必要なのは重度になった人だと思うと丹野氏。できることを自ら行うことが大切で、できることを奪われると進行に影響が出る場合も。「失敗しても、次にどうすればよいか工夫すればいいのです。普通にみな失敗しているはず」と話しました。そして今からできることとして「できない、助けてほしい、と本音を言える関係を築いておくことが大切です」との言葉に、参加者は深くうなずきました。

質疑では、家族や職場でのやりとりや、家庭での失敗エピソード、当事者仲間の経験、海外と日本でのサポートの在り方の違いなど、明るくユーモアを交え紹介されました。会場からは、時に涙が、それ以上に明るい笑い声が何度も聞かれました。

診断直後に適切なサポートを受け、病気とうまくかかわることができれば、当事者はよりよく生きられる。その思いから、丹野氏は会社の理解のもと現在も同じ会社に勤務しながら、当事者をつなぐ取り組みや講演活動のため全国を奔走しています。
認知症は誰もがなる可能性のある病気。病名から人を見るのではなく、目の前の人を見て、「誰もが安心して認知症になれる社会、支え、支えられる社会をつくっていきましょう」と締めくくられました。

ユーモアを交え、多くのエピソードを紹介する講師の丹野氏

講演会場での様子

参加アンケートから(一部抜粋)

  • 義母が最近、認知症が進んできたようで不安を感じておりましたが、今日少し気持ちが軽くなりました。ひとりの人として受け入れ、心配しつつも信用し、助けが必要なときは「助けて」と言ってもらえる関係を作っておきたいと思いました。
  • 失敗してもやり直せばいい、工夫するという前向きな考えに、ハッとしたり、納得したり。認知症とひとくくりにせず、その人自身を見るなど学ぶことが多くありました。ユーモアあふれるお話、周囲へ、また周囲からの優しい思い、すべてが心に響き、あたたかい気持ちになりました。認知症を必要以上に恐れることのない、安心してくらせる社会になったらと思います。
  • すばらしい講演でした。認知症の父の介護を続けており、娘の私が誰だかわからなくなりショックを受けていましたが、公演中に質問し、丹野さんの回答になるほどと目からうろこが落ちる思いでした。父に怒ったことはないつもりでしたが、訪問医に「時々、娘に怒られます」と言っていたのを聞いて本人は怒られたと思っていたのだと反省しています。丹野さん、かけがえのない生の声を聴かせて頂き、本当にありがとうございました。
  • 亡き父が認知症になったとき、父本人の苦しみ、不安、悲しみを思いやるより、家族としてどう対応していけばよいのかがまず先にきました。孤軍奮闘の日々を思い出し、家族の苦労、当事者の苦しみ、それぞれの立場に立てば、どちらも本当に大変なのだとあらためて思いました。丹野さんのお話や、会場にいらした方が忘れてしまうことへの不安、注意されることへの辛さを訴えていましたが、当事者のこうした声をまだまだ私たちは、ちゃんと聞いていないのだとあらためて思いました。
  • 私たちが無意識にもっているイメージや先入観が、認知症を正しく理解することを妨げ、当事者を置き去りにしているとあらためて気づかされました。発症年齢や種類もさまざまあり、ひとつにくくることはできない、認知症というレッテルでその人を捉えるのではなく、その人自身、ひとりの人間として向き合うことが大切だと感じました。当事者である丹野さんがこうして発信されていることに大きな意義があり、認知症に対する正しい理解や認識が、もっと広がっていくといいなと思いました。
  • 守ることが本人のためになるとは限らない。意見を聞くこと、言えること、本人や家族が安心してくらせる環境、相談できる場所がはっきりしていれば 住みやすい世の中になるのでは。認知症の方だけでなくすべての障害をお持ちの方に言えることだと思いました。
  • 認知症の高齢の母の介護で、なるべくやってあげることが母の為になると思っていたのですが、本人ができることはなるべく自分でやれるように、たとえ時間や手間がかかっても待つことが大事だと思いました。意識していきたいと思います。
  • 質疑応答での楽しくも考えさせられるやり取り、とてもよかったです。最後の質問者さんの生の声にはちょっと涙が出てしまいました。怒らないこと、誰に対しても気をつけていきたいです。
  • 「どんな簡単な仕事でも今できることをていねいにやる」「最後は成功体験で終わる」は、生きていくうえで大切と、あらためて感じました。丹野さんの人柄がすべてをよい方向に向けていると思います。
  • 柔軟に対応され、明るく前向きに生活されているご様子に感動いたしました。お話に笑ったり、グッときて泣いたりしました。同じ病気の診断をうけた方々が体験談を聞くことで、どれだけ救われることでしょう。「おれんじドア」の活動もすばらしいです。本日はありがとうございました。

 

◆この講演会はパルシステム共済連『福祉たすけあい助成金』を使用して開催しています◆