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「子ども・若者の未来をひらく福祉へ」宮本太郎氏オンライン講演会を開催しました

2月23日、当組合が設立した(一財)神奈川ゆめ社会福祉財団がオンラインにて講演会を開催し、69名が参加しました。この講演会は、横浜ラポールの協力のもと手話通訳を交えて行いました。

今回は、中央大学法学部教授・北海道大学名誉教授である宮本太郎氏に、若者が安定した生活基盤を築くことができる社会保障制度の見直しの必要性について、お話しいただきました。
また、実践事例として、県立高等学校における校内居場所カフェの取り組みを取り上げ、困難を抱える高校生の支援の実情と課題について、特定非営利活動法人パノラマ代表理事である石井正宏氏にご報告いただきました。

 

「交差点型社会」への転換が必要

宮本氏は、「日本には公的制度の奨学金はないといっても過言ではない」と日本の奨学金のほとんどは、給付型ではなく貸与型(ローン)であり、奨学金を利用した大学生は、平均約300万円の借入金を背負って社会人になっていると説明。

「本来、若者にとって心が躍るはずの人生の4つのステージ(進学・就職・結婚・出産)がリスクとして4つの壁となっており、さらにコロナ禍の打撃が若い世代に集中的に集まっている」と現在の若者がどういう状況にあるかを解説しました。

このようななかで、若者が社会保険も生活保護もうけられない厳しい状況にあり、日本の支援の制度が欠落していることを指摘。「若者を支援する制度がないために、若者が政治に無関心になり、政治に無関心だから政治を動かせないという悪循環に陥っている」と解説しました。

宮本氏は、社会保障制度が、充実しているスウェーデンとの相違から、解決策のひとつとして「『一方通行型社会』を『交差点型社会』に転換することが必要」と提言。
教育→就労→社会保障と一方通行である日本に対し、スウェーデンは、高校から直接大学へ進学する率は4割程度と高校卒業後に1度働く傾向にあり、その後必要に応じて大学へ進学します。また、教育、就労、社会保障を双方向に行来きしています。日本もこのスウェーデンのような「交差点型社会」に転換することができれば、若者にとってもライフチャンスが絶えず開かれると説きました。

中央大学法学部教授・北海道大学名誉教授 宮本太郎氏

専門性ではなくて関係性が大切

続いて、石井氏により、校内居場所カフェの取り組みが紹介されました。

石井氏は、「5年、10年引きこもった若者の相談をするなかで、この間に社会的な孤立に陥っていたり、親との関係が悪化していたり、交友関係が断たれる、精神疾患を発症するなどの複合的な課題を抱えてしまっている。5年、10年前にであえていれば、こんなに苦しまなくてすんだだろう」と考えたことがきっかけで、高校での校内居場所カフェをはじめています。

校内居場所カフェでは、まずは、生徒と日常会話や一緒にゲームをすることで信頼関係を築く(信頼貯金をためる)。その過程で、生徒が気軽に相談できる環境をつくり、潜在的な課題を顕在化させ、早期支援を実現しています。

また、「お金がないと文化資本にアクセスできない、人は人とのたしなみのなかで社会関係を紡いでいく」という考えのもと、カフェでは、梅ジュースやジャムづくり、楽器や音楽に触れる、浴衣パーティーの開催など、さまざまな機会を提供しています。

「教育、福祉、雇用に携わる専門家たちが縦割りで充分な支援とはいえない。学校に私のような人を配置することを制度化したい。また、ファーストプレイス(自宅)、セカンドプレイス(学校)、サードプレイス(地域コミュニティ)のしくみからこぼれおちていく人たちがいる。親と先生以外の登場人物を増やしてあげられるよう、ファーストプレイス、セカンドプレイス、サードプレイスそれぞれの中間領域として.5(てんご)の取り組みをしていきます」とお話しされました。

特定非営利活動法人パノラマ代表理事 石井正宏氏

参加者の感想より(一部抜粋)

【宮本氏の講演について】

  • 現実問題としてテレビではあまり扱われない部分までお話が聞けた。(40代)
  • 日本の若者の困難な状況が彼らの責任ではないことがわかり、もっと広く知ってほしいと思った。(60代)
  • 税の使われ方について、あまり意識していなかったが、スウェーデンの比較により、その違いが分かりとても勉強になった。(50代)

【石井氏の事例報告について】

  • 大きな問題になる前に食いとめる、高校に入って支援者を自然に知ってもらう、とてもいいアイデアで実践しているのがすごい。(50代)
  • 写真でよく分かった。支援者、司書の先生、教師が連携している事はとても良いと思った。(40代)
  • カフェにとても興味を持ち、ボランティアとして参加してみたいと思った。(50代)

 

当組合は、(一財)神奈川ゆめ社会福祉財団とともに、引き続きさまざまな団体と連携・活動し、困難を抱える子どもたちの支援に取り組んでまいります。