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  • 食と農 産地交流

「冬の産地体験ツアー(JAみどりの)」を開催しました

1月19日~20日の2日間にわたり、宮城県美里町・大崎市・涌谷町にて「冬の産地体験ツアー(JAみどりの)」を開催し、組合員6家族16名、理事・職員を含め21名が参加しました。

当組合は、JAみどりの(宮城県)とは、20年以上にわたり、農作業体験をはじめさまざまな交流を行っています。
自然豊かな田んぼが広がるJAみどりの管内を含む1市4町の大崎地域は、2017年12月に世界農業遺産(※)に認定されました。
今年度最後となる今回の交流では、渡り鳥の観察をはじめさまざまな体験をとおして、地域全体で生物多様性を育む農業を続けている産地への理解を深める交流を行いました。

※世界農業遺産:
社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産業と、それに密接に関わって育まれた文化、ランドスケープ、農業生物多様性などが相互に関連して一体となった、将来に受け継がれるべき重要な農林水産業システムを国連食糧農業機関(FAO)が認定する制度です。(農林水産省のホームページより)

食文化の体験からスタート

毎年、春~秋の交流では、田植えや稲刈りなど田んぼの体験をとおして交流を行っていますが、この日行われた冬の交流は、産地の食文化体験から始まりました。
宮城県の大豆の生産量は全国2位とのことで、JAみどりのでも各家庭で昔からみそ作りが盛んに行われてきました。
この日はみそ作りの最終工程であるみそ玉作りとそれを樽に投げ入れる作業を体験しました。子どもたちが中心となって大きな樽にみそ玉を投げ入れ、疲れてきたころに大人たちがお手伝い。

そのほかに、ジッパー付ポリ袋にみそ玉を詰め、少しずつ各家庭に持ち帰りました。冷暗所に寝かしておけば数か月後にはみそになるとのことで、指導してくださったJA職員から「産地では小学生が夏休みの自由研究に今の時期からみそ作りをして観察したりします。色の変化も観察してくださいね」との話もありました。また、昨年仕込んだみそを使って、みそ汁やみそおにぎりも味わいました。

次に、宿泊先のロマン館に移動して、ソーセージ作りを体験しました。
毎年冬の交流で好評のこの体験も、今年で最後。ソーセージ作りを教えてくれるパルシステム米の生産者の高梨さんは、平成元年から続けてきたハム・ソーセージ作りを、平成の終わりとともに30年の歴史に幕を下ろすそうです。後継者がいないため、老朽化した機械の買い替えを行わず、廃業を決めたとのことで、毎回の交流会で、おいしいハム・ソーセージを提供していただいていたのにとても残念です。

みそ玉作り(みそ作り体験)

ハム・ソーセージ作り体験

雄大な自然を体験

冬の交流の目玉となる渡り鳥の観察をするため、NPO法人蕪栗沼っこくらぶの方をガイドに迎え、蕪栗沼(かぶくりぬま)に向かいました。

蕪栗沼で冬を越す渡り鳥のほとんどはマガンで、7万羽を超える渡り鳥が集まるそうです。日中は周辺の田んぼで落ち穂や大豆を食べているため沼にはいません。日没とともに渡り鳥が隊列を組んでねぐらとなる沼に戻ってくる光景は迫力があり、自然の雄大さを体感できます。
昔は日本各地でこのような光景を見ることができたそうですが、今では飛来するマガンの9割が宮城県に集中しているそうです。
これには、ねぐらとなる沼だけでなく、餌場となる周辺の田んぼの保全も重要だそうで、地域全体で生物多様性を育む農業を続けている産地の取り組みの重要性を感じました。

その後は、ロマン館に戻り、夕食をとりながら生産者のみなさんとの交流会です。
生産者のいろいろな話、おいしい料理や酒を楽しみながら、1日目は終了となりました。

夜明け前の蕪栗沼へ

2日目は、夜明け前から再び蕪栗沼へ行き、マガンの飛び立ちを観察しました。人の顔がうっすら認識できるようになったころ、蕪栗沼の西側へ行って夜明けを待ちました。

マガンの飛び立ち

マガンは20ルクス(20wの電球がついたくらいの明るさ)になると飛び立ちを始めるとのことでしたが、この日はあいにくの曇り空。
何万羽ものマガンが一斉に飛び立つと地響きがしているような羽音が聞こえるのですが、この日は近くの沼にいるマガンはなかなか飛び立ってくれず、少し離れた沼のマガンが少しずつ飛び立つ姿しか見ることができませんでした。
それでも雲の切れ間から見える朝日と飛び立ったマガンの姿が重なったときは、日本画を見ているような風景となり、参加者から歓声が上がっていました。

世界農業遺産に認定された大崎耕土

北部広域倉庫見学

宿を出発したあとは、北部広域倉庫という米や大豆を貯蔵する倉庫を見学をし、米の等級や保存方法などを教わりました。

次に、世界農業遺産に認定された大崎耕土について、大崎市職員の鈴木さんから説明をしていただきました。
世界農業遺産や伝統的な農業、産地の食文化などについて学びました。
昔から洪水・渇水が多発していたこの地域は、水田や水路、ため池、居久根(いぐね:屋敷林のこと)などの伝統的な水管理システムによって巧みな水管理がなされてきました。その『持続可能な水田農業を支える「大崎耕土」の伝統的水管理システム』が評価され、JAみどりの管内を含む大崎地域が世界農業遺産に認定されたそうです。

産地を支えてきた生産者の努力や地域の取り組みも理解できたところで、ツアー最後に昼食交流会を開催。
餅文化が盛んな産地ならではのお雑煮や、ヌマエビと大根おろしの餅、干し柿を使用したなます、万能みそやしょうがみそをつけて食べるおでんなど、生産者の奥様方手作りの郷土料理を堪能して、2日間にわたるツアーを終えました。

2018年度の産地交流は今回で終了しますが、2019年度は5月25日(土)~26日(日)の春の交流からスタートします。田んぼの農作業体験や生きもの観察をとおして、米産地JAみどりのを満喫できるツアーを予定しています。お楽しみに!

生産者といっしょに集合写真を撮影