一人ひとりが「いのち」を尊重し、安心してくらせる社会をめざして
~被爆、戦後80年の節目に寄せて~
終戦から80年が経ちました。80年前、先の戦争では全国の多くの都市が爆撃を受け、沖縄では壮絶な地上戦、そして広島、長崎への原子爆弾投下で、多くの尊い命が犠牲になり終結しました。戦火を逃れ、命が守られた方々は、筆舌に尽くしがたいさまざまな想いを抱え、今日まで過ごされています。
戦後、日本は平和国家としてあゆみ、戦争をしない安定したくらしが保たれてきました。一方で、防衛費は年々増加するなど防衛力強化の動きが顕著になっています。国外に目を向けるとこの80年の間でもさまざまな地域で戦闘や武力行為が行われ、多くの尊い命が犠牲になっています。戦闘や武力による解決は、何も生み出さず、地球環境をも破壊していきます。
そして、現在、戦闘行為が行われている地域では核兵器の使用を示唆する動きが出ています。また、ある国家リーダーによる広島、長崎に投下された原子爆弾を正当化する発言には、これまで核兵器廃絶に向けてともに取り組んできた原爆被災者を想うと容認しがたい感情が込み上げました。あらためて私たちは、核兵器使用の抑止と廃絶に繋がることを切に願い、核兵器廃絶の運動や原爆被災者の想いを通じて、非人道的な核兵器の使用はどのような苦しみをもたらすのかを伝えていきます。
昨年、核兵器の廃絶を訴える活動を続けてこられた日本原水爆被害者団体協議会が、ノーベル平和賞を受賞しました。核兵器のない世界を実現するための努力と、核兵器が二度と使用されてはならないことを証言によって示してきたことが受賞に至ったとされています。
受賞後、私たちとともに高齢となった現在でもあきらめることなく核兵器のない社会をめざし取り組んできた神奈川県原爆被災者の会より、受賞報告とこれまでの運動の御礼をいただきました。しかし、平和を願う運動に敬意を表し御礼を申し上げるのは、平和を引き継いでいく私たちの方だと強く感じました。
私たちは、戦火を逃れ生き抜いてこられた方々とともに人の命の大切さ、平和の尊さ、核兵器の恐ろしさなどを訴え平和の運動をしてきましたが、残念ながらその時間には限りがあります。私たちは、被爆、戦後80年の今年を特別な節目として大切な年と決めました。
どのような理由があろうとも、日本のみならず、世界中の人々の尊い命が戦争によって犠牲となることがあってはなりません。さまざまな出来事に目を向け関心を持ち続けることが、私たち一人ひとりにできる平和に近づく行動となります。解決の糸口が見えない混沌とした世界情勢ですが、いち早く、世界中の人々が安心して次の朝を迎えられる日常へとなることを切に願うばかりです。
平和の継承は自分たちのことです。一人ひとりが、過去を知り、学び、行動し、次の世代へ平和で明るい未来をつないでいきましょう。
2025年8月15日
生活協同組合パルシステム神奈川
代表理事 理事長 藤田順子