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2018/02/13
イベントレポート

湯浅誠氏講演会「なんとかしよう! 子どもの貧困」を開催しました

2月9日、ユニコムプラザさがみはらにて、湯浅誠氏講演会「なんとかしよう! 子どもの貧困」を開催し、84名が参加しました。

子どもの貧困とは

現在、日本の子どもの7人にひとりが相対的貧困状態に置かれているといわれています。相対的貧困状態とは「お金がない」「つながりがない」「自信がない」の3つがない状態であると、その問題を提起するのは、日本の貧困問題に携わり、ラジオやテレビ番組のコメンテーターとしても活躍する法政大学教授の湯浅誠氏です。

「お金がなくても家族や地域社会とのつながりがあり、楽しく毎日をくらしていければ、それはただ貧乏であって貧困とはならない。問題は、お金がないことで家族や社会的なつながりから孤立してしまい、自信を喪失してしまうこと。また、その状態がまわりから見えにくいことです」と、湯浅氏は日本の子どもの貧困状態を赤信号と黄信号に例えて解説しました。

満員の会場で講演する湯浅氏

「赤信号は、学校に来なくなる、まわりも把握しているなど、明らかに貧困の様子がわかる状態ですが、問題は黄信号です。見た目は普通で他と変わらない。自分で何とかしよう、他人に知られたくないとがんばってしまうので、ふだんのくらしに見えてこない。“7人にひとり”の状態は黄信号も含んでいます。例えば、学校には普通に通っているが、お金がかかるから修学旅行に行けない状態。行けないだけではなく、友だちとの事前準備や事後の思い出話に加われない。だけど、周りのみんなは気がつかない。なんとなくはじかれている状態が続いて孤立感が増し、自分から離れていってしまう。赤信号の手前には黄信号の段階が必ずあるのです」。

湯浅氏は貧困状態にある高校生の声をスライドで流しました。
「買い物や進学、金額を見てあきらめる」「友だちといるとお金がかかるので一人でがまんする」「お金がなくて進学できないかも。それで家族が壊れている」「お母さんが仕事を2つかけもち。話している時間がない」「歯が痛くても生活費を考えると『痛い』と言えません」「やる気や夢がある子にはお金がなくてもあたりまえに支援できる社会になってほしい」。次々に流れる高校生の切実な声に、涙を流す参加者も多くみられました。

私たちに何ができるのか考える

では、子どもたちを「お金があって、つながりがあって、自信がある状態」にするために、私たちに何ができるのでしょうか。

「金銭面で個人にできることには限界があります。一人ひとりの額は小さくても、集まればそれなりの規模になるのでそれを活用しようと『神奈川ゆめ奨学金』が設立され、私も評議員になっています。ただ、お金は必要な人全員に配られなければいけないので高額な費用がかかります。行政が中心となって支援してほしいですね」と湯浅氏。

スライドに流れる高校生の声に目頭を熱くしました

「つながりと自信の面では、民間が得意分野です。子どもたちが孤立しないで安心して自分らしくいられる居場所が必要です。居場所とは『衣食住が確保でき、生活上の知識が得られる場』『いろいろな体験ができる場』『時間をかけてくれる場(ほったらかしの反対)』『トラブル対応してくれる場』のこと。家庭でそれを満たせるのが理想ですが、残念ながらすべての家庭が十分にできているわけではない。そこで、子どもたちを孤立させないために地域の人々による『子ども食堂』『学習支援』など“できることを、できる人が、できることから”やる『地域的養護』が必要になるのです。今では全国に1000を超える『子ども食堂』ができています」。

子ども食堂の意義

「子ども食堂」と普通の食堂との違いについて、湯浅氏は「いちばんの違いは、『時間をかけてくれる場』であること。そこに行けば時間をかけて話を聞いてくれる人がいる、団欒を提供する場なのです」と述べ、「子ども食堂は『いろいろな体験ができる場』でもあります。例えばみんなで鍋をつつくなど、多くの人にとってのあたり前のことが、その子にとっては特別な体験だったというように、貧困家庭の子どもは体験や時間をかけてもらっていない場合が多いのです。さまざまな体験がこれからの人生の選択肢を増やすことになっていきます」と説明しました。

「よく、自分は特別なことは何もできないので、という方がいますが、特技があるかどうかどうかは重要ではない。その子にとっての特別であればよく、いろんな人が自分にかかわってくれること、黙って見ていてくれるだけでいい『いるだけ支援』が必要なのです。また、 本当に必要な子に届いているかと言われることがありますが、その子が本当に必要としているのであれば必要な場所なのです。『子ども食堂』は、地域に開かれた場所として存在し、地域づくりと子どもの貧困対策の場所として走っていくことが大事です」と話されました。

参加者の声

  • 赤信号と黄信号の例えが印象深かったです。黄信号の子どもたちにいかに気づき、何ができるかなんだなと、スッと心に残りました。
  • 特技を持っていなくても、ただいるだけのおとなから始めてもよいということが、自分にもお手伝いできるのではと自信につながりました。何かお手伝いしたいです。
  • 「そのままを受け入れられる」ということの大事さを日々感じ、どんな人をも「そのまま受け入れる」人となりたい。
  • 高校生の声が印象に残りました。「うちは関係ない」ではなく、少しでも当事者の意識を持てれば社会は変わっていくのではと思いました。
  • 子ども食堂の必要性を理解できました。行政のできることと民間のできることの違いがはっきりわかりました。

講演会終了後、子どもの健全育成をテーマに活動している2つの市民活動団体の紹介と「神奈川ゆめ奨学金」の事務局より奨学金の概要説明が行われました。

その後、参加者同士でワークショップ形式の交流会が行われ、自分たちにできることをテーマに、それぞれの思いと問題意識を共有して会は終了しました。

自分たちに何ができるかを模造紙に書き出しました

【関連ページ】
(一財)神奈川ゆめ社会福祉財団からのお知らせ「神奈川ゆめ奨学金」