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2017/10/18
イベントレポート

有機栽培の課題と展望を確認 「ジョイファーム小田原 公開確認会」を開催しました

10月11日~12日の2日間にわたり、小田原市で「ジョイファーム小田原公開確認会」を開催しました。事前の講習会を修了した監査人と一般参加組合員、生産者、当組合およびパルシステムグループ役職員、関係者など67名が参加し、監査品目の『コア・フードキウイフルーツ』の栽培状況や帳票などを確認しました。

公開確認会は、生産者と消費者の二者が産地で生産状況を確認するパルシステム独自の制度で、1999年からスタート。12年ぶり3回目の開催となる(有)ジョイファーム小田原は、神奈川県小田原市を中心に静岡県、栃木県にも栽培地をもつ生産者約130名のパルシステムの産直産地です。環境保全型農業を推進し、今回の監査品目『コア・フードキウイフルーツ』のほか、柑橘類や玉ねぎなど果樹26品目、野菜2品目、加工品6品目を取り扱っています。当組合とは長年交流があり、「小田原食と緑の交流推進協議会」を設立し、交流を通じて産地、消費地両者の地域発展に寄与することを目的に活動を行っています。

産地プレゼンテーションで知る産地の課題と展望

開会にあたり当組合の吉中理事長は、「仕事をしながら多くの組合員を受け入れて交流してくださっていることに感謝しています。協議会産地としてお互いの地域づくりの発展のためにすばらしい取り組みをしていることを、公開確認会を通じてみなさんに知っていただきたい」とあいさつしました。これに対し、(有)ジョイファーム小田原の長谷川功代表取締役社長は、「今回で3回目となるが、公開確認会を実施するごとに産地がステップアップしていきます。疑問に思ったことはどんどん聞いてほしい」と応えました。

はじめに、産地からのプレゼンテーションが行われ、事務局の大須真希さんより組織概要や事業内容、環境保全型農業を推進するために取り組んでいること、交流事業などについて紹介がされました。
今回の監査品目となった『コア・フードキウイフルーツ』(JAS有機キウイフルーツ)を生産する田中重治さんからは、キウイフルーツ栽培の沿革、JAS有機キウイフルーツの剪定から施肥、受粉、収穫、出荷までの栽培方法、JAS有機認証を取得するためにはさまざまな規約の制定が必要であり、肥料や機材、出荷に至るまで有機でないものとは完全に区別しなければならないこと、栽培から出荷までを詳細に記録するため、たくさんの帳票類が必要であることなどが紹介されました。

産地プレゼンテーションの様子

また、JAS有機キウイフルーツの栽培実績や生産販売実績の推移も紹介され、有機栽培をする生産者が年々減少していくことや生産者の高齢化の問題にも触れられました。

「確実に安全・安心なものをお届けしたいという思いがあったので、有機栽培をすることに抵抗はありませんでした。しかし、高齢化に伴い、記録を細かくつける、資材区分を明確にする、受粉の手間、費用などを考えたときに、このままではJAS有機キウイフルーツを栽培する人がいなくなってしまうのではないかという危機感があります。今のままでは自分の子どもに後継者になってくれとは言えない」(田中さん)

課題として、“労力や経費に見合った販売価格になっているのか” “有機栽培への認知度が低いこと” “高齢化による既存生産者の生産面積と収量維持の問題” “新規生産者の確保がむずかしいこと” が挙げられました。
その対策と今後の展望として、「JAS有機認証」を受けたものだとひと目見てわかりやすい形での販売や、オリンピックをきっかけとして選手が食べる有機栽培作物をとおして認知度アップ。販売量と価格を安定化し、“生産者が有機栽培したいと思える販売の確立” をめざす。また、認証取得作業を事務局がサポートし、若手生産者や新規就農者への有機栽培を推進し、農作業スタッフの派遣やJAS有機講習会の受講を行うなどして “キウイフルーツの有機栽培の拡大” を図り、「有機といえばジョイファームと言ってもらえるようになりたい」(大須さん)と述べられました。

その後、生産者の長谷川壮也さんより、(有)ジョイファーム小田原全体の中長期ビジョンが説明され、農薬、肥料の使用基準厳守、交流事業の拡大、耕作放棄地の解消、小田原農産物のブランド化、若手後継者の育成など、具体的なビジョンが発表されました。

有機栽培のほ場を確認

プレゼンテーションのあとは、実際に田中さんのほ場を訪問し、貯蔵庫や資材置場、『コア・フードキウイフルーツ』(JAS有機キウイフルーツ)の栽培・管理の様子を視察しました。

田中さんのキウイフルーツのほ場は80アールあり、そのすべてを有機栽培基準(コア・フード)で栽培していますが、そのうち10アールはエコ・チャレンジ(※)で出荷されています。有機栽培基準では有機栽培のほ場とそれ以外のほ場との間隔が4mなければならないと厳しく決められています。田中さんのキウイフルーツのほ場の近くには有機栽培ではない農作物が栽培されており、その緩衝帯で栽培されたキウイフルーツは『コア・フードキウイフルーツ』(JAS有機キウイフルーツ)として出荷できないとのこと。田中さんは4mのところをあえて6mの間をあけて栽培し、青いテープをつけてはっきりと区別していました。

※エコ・チャレンジ:パルシステムが定めた「削減目標農薬」、除草剤、土壌くん蒸剤を使用せず、さらに化学合成農薬や化学肥料(窒素量)を各都道府県で定められた観光栽培基準の1/2以下に削減して栽培された農産物

監査人と参加者でほ場を確認

生産者・田中重治さんの説明を聞きました

また、貯蔵庫や肥料倉庫も有機栽培とそれ以外のものは完全に分けられており、有機栽培の収穫かごには赤いテープがつけられていました。また、機材もJAS有機キウイフルーツの作業をする前にはきれいに洗ってから使用するとのことで、徹底した栽培管理が行われていることが確認できました。

監査人からの質問に答える田中さん

貯蔵庫の様子 収穫カゴには有機専用の赤いテープが

肥料倉庫の様子 有機栽培用とはっきり区別されています

5年後、10年後、ともに発展するために

ほ場の視察後は、監査人より監査所見の発表がありました。

監査人のひとり、組合員の青木雅子さんは「有機と認められているものを使用し、しっかり管理されていることを確かめました。消費者にはとても安心できるものだが、生産者にとって大きな負担となり、今後も継続できるのか不安な生産者もいるとのこと。費用や手間をかけても有機栽培として販売されない場合もあり、いろいろな面から次の世代に受け継ぐのがむずかしい現状もあるとうかがいました。生産者は安全なものを届けたいという思いを込めて生産されているので、消費者である私たちも商品の安さばかりに目がいきがちだが、価格の先にある安全・安心、そして生産者の思いを組合員活動をとおして伝えていきたいと思います」と述べました。

帳票類を確認しながら生産者に質問をする参加者

監査所見を発表する監査人

パルシステム連合会の江川淳産直部部長は監査人のまとめとして、多数の交流事業に取り組んでくださることに感謝を伝えながら、プレゼンテーションで述べられた「中長期ビジョン」に着目し、「高齢化がすすんでいるジョイファーム小田原で農業技術を引き継ぐには今後5年~10年が大事な時期。新規就農への具体的なビジョンをもってすすめてほしい。交流から就農にチャレンジすることも考えてほしい」と述べ、「組合員も利用しやすい価格であったほうがよいが、安いことで産地が発展できないことは望んでいない。事業計画のとおりにジョイファーム小田原がますます発展していくことを通じてパルシステムの産直がより発展していくようにいっしょに取り組んでいきたい」と述べました。

監査所見を受けて鳥居啓宣専務取締役は、「3回目となった公開確認会で有機栽培の確認を行い、中長期ビジョンで今後のジョイファーム小田原の方向性が示された。今いる若手生産者が5年後、10年後にどのようになっているか、今度公開確認会があったときに、次のジョイファーム小田原がどのような産直を行っているか、産地としての課題として受け止めたい」と結びました。

生産者・監査人・一般参加者全員で記念撮影